鍼灸治療

中医学(*注1)の治療法の中で双璧をなすのは、「漢方治療」と「鍼灸(しんきゅう)治療」です。中医学では、人間も含めた動物の体内には、『気』(正しくは『氣』と書き、『き』と読む、現代用語のエネルギーのようなもの)の流れる通路(経絡,けいらく)があると考えます。しかしこれは、目に見える形のある通路ではありません。この通路には、地下鉄が駅で地表と通じているように、体表との連絡口があり、これを経穴(けいけつ)、ツボと言います。

中医学画像
イラスト:相澤るつこ作

そして、中医学では身体全体のバランスが崩れたときに病気が発生すると考えるのですが、それはすなわち、経絡内の氣の流れが淀んだり、枯れたりなどの不調が根本原因と考えます。鍼灸は、経穴を刺激することによってこの氣の流れを整え、機能回復をはかる治療法です。
鍼(はり)は、注射で使用するよりもずっと細い針をツボに刺します。とても細いので、多くの場合、痛みはほとんど感じません。全て使い捨ての鍼を使用しております。灸(きゅう)は、乾燥させたヨモギ葉の柔毛を精製して固めたものに火をつけて、火傷しないように皮膚やツボにあてるものです。

鍼灸の効果については、人間でも動物でも、西洋医学的、近代科学的に研究が進んでいます。例えば、鍼灸で一部の経穴を刺激すると、痛みを和らげるホルモン(内因性オピオイド)が体内で分泌されることが報告されています。また、鍼灸は自律神経に作用して、心臓や胃腸などの臓器の働きを調整することがわかっています。

温灸は単に身体を温めるだけでなく、その独特な香りも効果の一助となっています。ヨモギ葉の柔毛が燃えると、有効成分である精油がその香りとともに嗅覚を刺激し、肺を通って血液中に入り、人間や動物をリラックスさせます。そして、身体を芯から温めて免疫機能、代謝機能などを高めるとされています。

*注1 中医学とは
WHO(世界保健機構)では中医学は中国の伝統医学のこと、東洋医学は日本の”漢方”、すなわち日本の伝統医学のこととして区別しています。

漢方は、中医学の一部が日本国内で独自の発展を遂げたものであり、漢方=中医学ではありません。

当院では、特に長期間患っている病気には、西洋医学と中医学の治療を併用する場合が多く、そうすることで、治るまでの時間を短縮したり、お薬の副作用を軽減したり、西洋薬の長期に渡る使用によっておこる弊害を、避けることを目指しています。

鍼灸はどのような病気に有効なのか?

人間も含めた動物の身体は、歳とともに代謝が落ちて血液の流れが悪くなり、結果的に痛みが発生したり病気に罹ったりします。

鍼灸はこの代謝や血液の流れを改善しますので、加齢による病気や症状には顕著な効果を発揮します。高齢でなくとも、長期間病気に罹っていると体力が落ちて、いわゆる虚弱体質になりがちですが、この体質改善にも有効です。また、鍼灸は関節炎や椎間板ヘルニアなどの痛みや麻痺にも有効とされています。

最初は集中して施術し、症状に改善がみられたら徐々に間隔をあけて施術することが一般的です。

  • 初めての温灸(棒灸)
    初めての温灸(棒灸)で気持ちよさそうにしているニャン太郎君です。
  • ニャン太郎君
  • のりちゃん
    てんかん持ちの三毛猫のりちゃんには、頭にも温灸をしました。