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歯科診療
近年、ヒトで歯周病や口腔内の慢性炎症が、糖尿病や心臓病・腎臓病・肺炎ひいては認知症などに大きく関与していることが明らかになってきています。これは犬猫も同じで、お口の中のトラブルを治療・予防することが他の病気予防と健康寿命を延ばすことに繋がります。それには日頃からお口のケアをすることが大切ですが、単に歯磨きをするということだけではなく、日々お口から入れるもの=食べるものも大切です。
当院は動物歯科に注力しており、これまで多くの症例の治療に当たってまいりました。治療には漢方薬や鍼灸治療・栄養療法を用いることもございます。特に、根治が難しいと言われている猫の慢性歯肉口内炎(尾側口内炎)にも、これらを併用して良い状態を目指します。さまざまなお口のご相談にお答えさせていただきます。
主な症例
猫の慢性歯肉口内炎まんせいしにくこうないえん
猫の歯肉口内炎は、お口の中がとにかく痛い病気です。激しい炎症があるので、粘膜をみると真っ赤です。痛みのために汚れた涎(ヨダレ)が出たり出血したりして、食べられません。注射や飲み薬で一時的には良くなっても、再発しやすい病気です。
治療としては、「完治」させるためには抜歯が必要です。そのとき、「歯の根っこを残さずに抜くこと」が非常に大切です。根っこを残さずに抜くには高度な技術と経験が必要です。当院では、これまで多くの猫を抜歯して完治に持ち込んでおります。
抜歯して歯が無くなっても食事はできます。元来、猫は純肉食動物なので、歯は捕らえた獲物を仕留める、皮や肉を引きちぎる鋏やナイフのような役割をしており、ヒトのように食べものを細かくすりつぶす機能はあまりありません。ですから食事を細かく切って与えれば問題はありません。市販のキャットフードであれば、咬まずに丸呑みしても問題ありません。むしろ痛みのでる歯を残しておくほうが、痛みでお食事ができないです。
- 実例
- この猫はほとんどの歯を抜歯して上顎の左右の犬歯しか残っておりませんが、口内炎と舌炎が重度です。このような状態を慢性歯肉口内炎(尾側口内炎)と呼びます。
猫の歯周病
ヒトの歯周病と同様に、猫も歯周病になります。酷い口臭がする場合は、歯周病(歯肉炎、歯周炎)を疑います。 歯の表面に食べかすの歯垢が溜まると炎症がおこり、引き続いて様々な化学反応が起こって『歯周病』が進行します。歯垢が唾液中のカルシウムやリンなどを取り込んで、やがて歯石となります。歯石はその表面がザラザラなので、その上にさらに歯垢が付きやすくなります。
『歯周病』が重度で慢性的になると、歯の周りの組織や骨を溶かすため、歯肉が腫れる・赤くなる、口臭が酷くなる、歯がグラグラする・抜ける、歯の脇から膿や血が出る、など症状がみられるようになります。軽度の歯周病の場合には、歯石を除去して歯面を磨き、歯周ポケットの中をきれいにお掃除します。
これらの処置は全身麻酔をかけて行います。というのも、犬や猫では処置中に、少々の痛みに耐えて、おとなしくじっとして口を開け続けてはくれないからです。
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- 実例
- オッドアイのまだあどけない雄猫チャンですが、お口の中を見てみると…。
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- 右も左も、上も下も、真っ赤です。
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- 歯肉は長時間の炎症によって後退しています。
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- 歯を抜いてからはすっかり元気になりました。
根っこを残さずに抜歯しました
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- 右下顎
- 重度の歯周病でしたので、やむなく臼歯(犬歯より奥にある歯)は全て抜きました。これは右下顎の臼歯を抜歯したところです。根っこを残さずきれいに抜歯できています。
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- 左下顎
- 左下顎の臼歯。抜きにくい場合には、このように歯を分割して抜きます。
小型犬の乳歯遺残にゅうしいざん
小型犬の場合特に、永久歯が生えてきているのに乳歯が抜けずに残ってしまうことがあります。そのままおいておくと、永久歯が正しい位置に生えず、重度の歯周病に発展しかねません。
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- 実例
- このチワワは永久歯が生えてきているのに乳歯が残っていて、犬歯と切歯(犬歯と犬歯の間の小さな歯達。上下6本ずつあります)が2列になっている部分があります。
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- 上顎下顎の長さのバランスにも問題がありました。本来、下顎がもう少し短くて、あるいは上顎がもう少し長いと咬み合わせに問題が起こらないのですが…
眼窩下膿瘍がんかかのうよう
急に眼の下が腫れてきて痛みがある場合、それは眼窩下膿瘍という歯の病気かも知れません。上顎臼歯の根っこに細菌感染がおこり発症します。臼歯の根っこに細菌感染が起こる主な原因は以下のものです。
主な原因
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①重度の歯周病
- 歯の周りの炎症が重度であると、歯の中心にある神経と血管部分(歯髄)に細菌が侵入し、歯の根っこに激しい炎症が起こります。
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②破折(はせつ)
- 硬いものを咬んで、あるいは事故などで歯が折れて歯髄が露出してしまうと、そこから細菌が侵入し、炎症が起こります。
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③咬耗(こうもう)
- 上下顎の歯が咬みあうことでエナメル質や象牙質がすり減ることを咬耗と言います。石やテニスボールなど硬いものを咬み続けて激しく歯がすり減るのも咬耗です。咬耗が進行すると歯髄がむき出しになり、細菌が侵入して激しい炎症が起こることがあります。
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④むし歯
- 犬猫でむし歯を認めることはごく稀です。発見された時にはすでにかなり進行していることが多く、大部分の歯が消失して、根っこ部分も激しい炎症が起こっていることが多いです。
眼窩下膿瘍の実例
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- 実例1
- 左の眼の下が急に腫れてきて、食欲もありませんでした。
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- 麻酔をかけて左上顎の口の中をみると、丸で囲った中にある臼歯の周囲は赤く腫れあがり、押すと膿が出てきました。レントゲン検査で、この歯の根っこに激しい炎症が見つかり、周囲の骨などの組織が溶けているのが分かりました。
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- 実例2
- 右眼が痛そうということで来院されました。
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- 実例3
- 左眼の下が急に腫れてきたので来院されました。
外歯瘻がいしろう
歯の周囲が化膿し、溜まった膿が排出口を求めてさまよい皮膚に穴を開けてしまうものを、外歯瘻といいます。皮膚に炎症が起こるので、皮膚炎と間違われることがよくあります。
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- 実例
- 顎の皮膚を掻きむしり皮膚炎と診断されて軟膏を塗っていましたが治らず、当院へ来られました。
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- 麻酔をかけて顎の毛を剃ると、大きな穴が開いていました。
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- お口の中は、ほとんどの歯の周囲に炎症があり、歯周炎が進行して歯肉が後退していました。手前に見える右下顎・犬歯の根っこから出ている膿が顎の穴まで到達していることがわかりました。